未来の金融をデザインする

主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

「知識創造企業」_金融経済読書会Classic_開催報告_2016年3月19日

なぜ今、知識創造企業を取り上げるのか?
主に古典を扱う読書会である金融経済読書会Classic。今回は野中先生と竹内先生が元々は英語で書かれ、日本語に翻訳され逆輸入された形で日本で発売された「知識創造企業(以下、「本書」)」を扱いました。本書を取り上げたきっかけは、今後人工知能やテクノロジーがさらに進化していく社会で、恐らく多くの知識が今まで以上に形式知化され、人の仕事はコンピューターに一部置き換わっていくことが予想される中、人間の強みは暗黙知を持っていることではないか、という問題意識からきています。実際に読んでみたところ、20年以上前の本ですが、今読んでも非常に示唆が富んでいました。
知識創造企業

知識創造企業

例えば、ここ数年流行のリーンスタートアップやデザイン思考の文脈でよく言われるような、ラビッドプロトタイピングや観察(エスノグラフィー)の重要性といったことは本書でもすでに指摘されています。

一方で、知識創造企業としての新しい組織構造として「ハイパーテキスト型組織」があげられており、ハイパーテキスト型組織への移行途中の企業の例として花王が、そして完全にハイパーテキスト型組織へ移行している組織の例としてシャープが取り上げられていますが、現在のシャープの状況を鑑みるに、20年前のように本書で指摘されてる知識創造企業の完成系の組織として今もハイパフォーマンスを発揮しているとは残念ながら言えないものと思われます。
このように今でも十分通用することが書かれている一方で、事例を後追いしていくと、必ずしもその後の企業が引き続き知識創造企業になっていないというのが興味深いところといえます(ビジョナリーカンパニーで取り上げられている会社にも同様のことが言えると思いますが…。)。

当日のディスカッション内容
当日の読書会では以下の二つの論点を扱い、それぞれ二つのチームに分かれて議論を行いました。
1.なぜ日本企業はうまくいかなくなったのか。
2.知識創造企業の例は製造業のみだが、製造業以外の業種にもSECIモデルは適用可能なのか。

1.では以下のような意見等がありました。

  • 組織の硬直化が原因ではないか。日本の企業は人材の流動性が低いことがあげられる。
  • 危機感の共有が出来ていないことも大きい。また、失敗が許されない文化があり、そのため、SECIモデルがうまく機能しなくなっているのではないか。
  • 同一の人が集まりやすく、社内に多様性がない。
  • 人材が流動化していくことが重要。ダイナミズムを動かしていく多様な人材のプールが必要。また社外のつながりもこれまで以上に求められるようになっている。
  • 環境の変化が大きい。今の日本企業は外部環境の変化に対応しきれていない。シャープは本書ではマネをしない企業と書かれていたが、現在はマネをするようになった。
  • 同じく野中先生が著者の一人となっている「失敗の本質」に書かれているように日本企業は戦艦主義に陥ってしまった。また、シャープは経産省補助金をあてにしたビジネスになっていたのも大きいと思われる。

2.では以下のような意見がでました。

  • そもそも今では日本企業の定義が難しい。何をもって日本企業というのか。株主比率で外人が多いソニーは日本企業といえるのか。また、知識創造企業として日本企業が例にあげられているが、製造業以外ではどういった企業が知識企業といえるのか。
  • 商社は昔と比べて飲み会の回数は減っている。以前は、飲み会や社員寮を通じて、企業の文化的側面が強化されていたことがあったといえるが、今はかつてと比べてこの点は弱くなっているかもしれない。
  • イノベーションの源泉としては、知の探索と知の深化の二つが重要。前者においては、who knows who(誰が誰を知っているのか)、who knows what(誰が何を知っているのか)を知ることが肝要になってくる。かつては企業文化がしっかりしており、上記の知の探索も効果的に行われていたが、最近では日本企業(日本企業の定義はあいまいだが…)では知の探索が行われなくなってきているのではないか。
  • 日本の企業は意思決定に時間がかかりすぎている。通常は意思決定を早めるため、権限委譲を行う形として事業部制を用いられることがあるが、事業部制になってむしろ意思決定が遅くなっているケースも見られる。

当日は非常に盛り上がった議論となりましたが、その中でも共通の意見としてあったのは「日本はもはや知識創造企業ではないのではないか。では、なぜ知識創造企業でなくなったのか。」という点でした。日本の企業は環境の変化に対応が出来なくなったという意見もありましたが、本書のP5には「日本企業の連続的イノベーションの特徴は、この外部知識との連携なのである。外部から取り込まれた知識は、組織内部で広く共有され、知識ベースに蓄積されて、新しい技術や新製品を開発するのに利用される。」と書かれており、本書が定義する知識創造企業はむしろ外部環境の変化に強いと考えられるのが、解釈の難しいところです。

日本の企業は知識創造企業でなくなったのか?
早稲田大学ビジネススクール准教授の入山先生がハーバードビジネスレビューで連載されている「世界標準の経営理論」の第17回では「世界の経営学に『野中理論がもたらしたもの』」というテーマにを扱っており、この回ではSECIモデルと、ナレッジベーストビューが解説されています。
こちらに興味深いことが書かれているので、いかにて一部引用します。

しかし、いまはシャープに代表されるように、日本のメーカーの多くに当時の面影は見られない。この事実を背景にSECI理論の説明力を疑問視する意見も、筆者は聞いたことがある。
しかし、それは逆ではないだろうか。むしろ日本企業の多くが過去の成功体験からSECI理論の示唆を軽視し、一方でそれを今実現できているのが、欧米の有力グローバル企業ということではないか。例えば、社内で対話を促す「場作り」を重視する企業は、むしろ最近の欧米の有力な大企業によく見られる。(中略)
このように長きにわたり成功し続けているGEやトヨタを見ると、SECI理論の説明力は衰えるどころか、むしろ増しているとすら言えるかもしれない。

冒頭に書いたように、本書ではすでにラピッドプロトタイピングやプロトタイプの作成の重要性、またいかに個人の暗黙知を組織の形式知に転化させるのか、そして暗黙知を醸成するためにどのようにして企業文化を浸透させるのかといったことが指摘されています。去年ベストセラーとなった「How google works」等を読むと、上記は、まさに現在アメリカ西海岸のシリコンバレーの企業によって実践されているものだと思われます。
今後テクノロジーの進化や人工知能が発展していく中で、人間の強みはまさにSECIモデルが指摘しているような個人の暗黙知を組織的に形式知化するプロセスの循環となっていき、このプロセスを持っている企業が今後の知識社会では一層競争力を発揮するものだと考えます。

次回のclassicの課題図書はピーター・センゲの「学習する組織」?
読書会を通じて思考を整理していく中、本書は何度も読み直したいと強く感じました。そして。この流れを引き継ぐとなると、次に取り上げる本は、本書の2章でも言及され、そして批判もされているシステム思考でおなじみのピーター・センゲの「学習する組織」あたりかもしれません。
学習する組織――システム思考で未来を創造する

学習する組織――システム思考で未来を創造する

学習する組織の日本語訳は2011年に発売されていますが、元の本は1990年に発売されているということもあり、古典として扱ってもよいかと思います。500ページを超える大著ですが、興味がある人はいいねもしくはコメントを頂戴できれば幸いです。

当日の資料
ご参考まで
http://www.slideshare.net/fedjapan/20160319-59777359

マイナス金利と日本経済_FED特別勉強会_開催報告_2016年3月6日(日)

今年の1月に日銀がマイナス金利政策の実施を公表して以降、長期金利が初のマイナスになり、日本の経済、金融環境に大きな影響を与えています。そこで、マイナス金利政策の理解を深めるため、3月6日(日)にマイナス金利政策の勉強会を開催致しました。当日の資料はこちらとなります。

上記スライドを用いたプレゼンの後、チームに分かれてマイナス金利政策における論点出しを行いました。その結果、以下の6つの論点についてチームに分かれて議論を行うこととしました。

  1. マイナス金利下において、今後金融機関はどのようにして儲けていくのか。
  2. マイナス金利は企業行動にどのような影響を与えるのか
  3. マイナス金利によって家計はどのような影響を受けるのか。
  4. 日本経済全体から見た場合、マイナス金利は日本経済にどのような影響があるのか。
  5. マイナス金利政策はそもそもどのような効果が見込まれるのか。
  6. マイナス金利政策はグローバルではどのような影響があるのか。

当日はエコノミストの方やセントラルバンカーの方もお招きしたこともあり、非常に活発な議論がなされました。議論の中では以下のような意見がございました。

  • マイナス金利下で金融機関が儲けるのは恐らく難しい。また、マイナス金利の負担を家計に転嫁できないのではないか。
  • マイナス金利政策を実施したとしても企業の投資が増えることはないように思われる。すでに企業にはお金が余っている状況。新規投資を促すはベンチャーに企業にお金が回るような仕組みが求められる。
  • 住宅ローンの面では家計にもメリットがあるのではないか。
  • 前々から日銀がイシューとしている「デフレマインド」とはそもそも何か。本当に「デフレマインド」がイシューなのか。日本経済が今の状況から脱却するには構造転換の方が重要ではないか。
  • 日銀の独立性について家庭の例を用いる。親が国民、子が政府とした場合、中央銀行は家庭教師の役割を担っている。子どもが親から言われていることをしっかりと行っていない場合は、家庭教師は子どもに対してやるべきことを指導する必要がある。中央銀行はこの文脈での家庭教師の役割と似ている。
  • 日本がマイナス金利になると、国内での運用は儲からなくなるので、これまで以上に海外での運用が重要になってくる。またグローバル企業と非グローバル企業の差はますます大きくなっていくのではないか。

日本の経済や金融政策の動向の理解を深めるには、日銀の動向に加え、他の国の中央銀行の金融政策もウォッチすることが重要となります。今後もFEDでは、金融政策の観点からも今後の経済・金融の状況をフォローしていきたいと思っております。引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

ブロックチェーン勉強会_FED特別勉強会_開催報告_2016年3月5日(土)

1月、2月と開催したFintech勉強会の流れをくんで、3月5日に外部から講師をお招きして、ブロックチェーンについてご講演をいただきました。3時間ちかくの時間があったのですが、プレゼンと講師へのご質問であっという間に3時間がすぎました。質問コーナーが盛り上がりすぎて、FEDでは珍しく(たぶん初めて)参加者同士でのディスカッションをする時間がないこととなりました。

諸事情により講師と当日の内容を公開をすることは出来ませんが、世間ではまだあまりよく理解されてはいないことが多いブロックチェーンの仕組みについて、実務の点からビットコインブロックチェーンとそれ以外のブロックチェーンの違い、ブロックチェーンの応用分野について等、幅広に議論することが出来ました。

FEDでは引き続きFIntechの分野について勉強会やセミナーを開催したいと思っておりますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

第2回法と経済学勉強会_開催報告_2016年2月28日(日)_

2月28日(日)に第2回法と経済学勉強会を開催しました。

今回は、第5章「財産の利用における対立と協調:外部性の問題」、第6章「公共の財産」、そして第7章「知的財産」を扱いました。

法と経済学

法と経済学

第5章では、経済学でいうところの外部性の話をベースに、コースの定理、矯正税(ピグー税)、情報の非対称性、排出権取引資産効果といった経済学でおなじみのテーマを扱いながら、法制度やルールをどうやってデザインをしていくかと学びました。外部性の例としてあげられた一つが「会社における遅刻」です。

例えば9時が会社や工場の始業時間とする場合、9時から準備をして9時半の開店にそなえる場合や、工場を稼働させるために準備をすると行った場合、ある人の遅刻は他の人の仕事の生産性に影響を与えるため、負の外部性が存在しているといえます。他方、ホワイトワーカーの場合、正直なところ、9時が始業時間として、9時5分に出社したとしても、9時から会議やミーティングがない限り、他の人に仕事上影響をあたえる(外部性が発生する)ことは限定的かと思います。こういった場合でも本当に9時に出社すべき合理性はあるのかや、どういったルール作りが望ましいのか等を議論しました。

6章では、経済学で言うところの公共財について学びました。企業の会計監査を行う監査法人を公共サービスとして捉えた方がよいのではないかという提案に対しては、プリンシパルエージェンシー問題の点から、監査法人の選定については、2重のエージェンシー問題、すなわち、株主⇒経営者⇒監査法人が存在するのがイシューであって、株主の利益(公共の利益)を沿うように監査法人を選定できれば、必ずしも監査を公共サービスにしなくてもよいのではといった議論がなされました。

最後の7章では知的財産について経済学的な視点から議論を行いました。具体的には著作権や特許についてビジネス上、どう扱うか等活発な議論がなされました。

これまで「法と経済学」の本を用いて2回勉強会を開催して来ましたが、個人的には正直なところやや消化不足なところがあります。今のところ1回で100ページ程扱っていますが、もう少し扱うページを減らしてでも一つのトピックを深掘りした方が、理解が深まるのではないかと考えております。この辺りは進めながら参加者の皆様の意見を踏まえて、どうするかを決めていきたいと思います。

「Fintech革命」読書会_開催報告_2016年2月14日(日)

2016年3回目となる読書会では、前回と同じく日経BPムックの「Fintech革命」を扱い、ワールドカフェを行いました。今回はFEDに初めて参加された方が参加者の7割程を締め、主催者にも関わらず、ややアウェイな感じがしました(笑)

FinTech革命(日経BPムック)

FinTech革命(日経BPムック)

ディスカッションテーマは前回とほぼ同じく「Fintechは生活や働き方にどのような影響を与えるのだろうか?」でしたが、プレゼンの内容を前回と変えてみたり、ディスカッション中に音楽を書けてみたりと、少しだけ前回と変えたところもあります。今回のディカッションでは以下のようなことが議論されていました。

  • SNSソーシャルレンディングが発展する中、人からどのように見られているか日常から意識する必要が出てくるのではないか。ネガティブな表現がSNS等でみつかると融資がおりないこともありえる。
  • 働き方に関して、自分の仕事でいかに人工知能を活かすかが重要になってくる。他方、データを活かすことができる人材が社内にあまりいない。
  • 規制や個人情報保護法により情報を提供できないときもある。そのジレンマをどうするのか。また、データの扱いは性善説が前提とされているが、悪用される可能性もある中で、データとどう付き合うか。
  • 判断が伴う業務はAIにとって変わられる可能性がある。そのような状況においては、今後は今まで以上に高度な頭脳労働が求められるようになる。また、このような環境においては、共感力やクリエイティビティが一層重要になってくるのではないか。
  • Fintechが導入されることで、中小企業の業務改善に役立つ。例えば、中小企業がスクウェアを導入することで、これまで決済に使っていた時間を他の業務のための時間に使えるようになる。また、FIntechは不均衡の改善にも資する。Fintechを上手に使える人は今まで以上便利になる。また、これまで金融サービスの恩恵をうまく得られなかった人達もFIntechが進めば今までよりも容易に金融サービスにアクセスすることができるようになるだろう。ビットコインは管理者がいないという特徴があるが、マネーロンダリング等の不正資金について監視をどうやって担保するのかという課題が残る。
  • 日本特有の現金主義がまだ根強く。文化はすぐには変わらないのではないか。遠い未来というよりも2020年のように近い未来に何が出来るかを目処に現在ビジネスは動いている。

以上となります。次のFEDでのFintechの勉強会は3月5日(土)9時からを予定しまいます。テーマは「ブロックチェーン」で外部から講師をお招きする予定です。ご興味がある方はこちらにもご参加いただけますと幸甚です。

「Fintech革命」読書会_開催報告_2016年1月31日(日)

2016年2回目のFEDの勉強会では、日経BP社から出版された「Fintech革命」というムック本を題材に、Fintechについて幅広く学びました。

FinTech革命(日経BPムック)

FinTech革命(日経BPムック)

今回は参加者が多いことが見込まれていたことと、Fintechを深掘りするよりもFintechをいかに幅広い視点から捉えることを重視したため、FEDでは初のワールドカフェ形式※でディスカッションを行いました。
※ワールドカフェとは

議題は「Fintechは今後我々の生活や働き方をどのように変えていくのだろうか?」で、1チーム4名〜5名程で、メンバーを替えながら合計3回ディスカッションを行いました。ディスカッションでは以下のような意見が出ました。

  • Fintechを二つにわけて考える必要があるのではないか。すなわち、既存の金融の合理化と、国家に変わる新しい信用保証の金融。日本の金融機関で見えているのは合理化のための金融。金融庁はFintechの動きに対して、どういう風に考えているのか。ビットコインは国家のあり方、社会のあり方、我々の行き方にも影響を与えてくるのではないか。
  • Fintechには経済的なメリットではない価値もあるのではないか。Fintechによる使い勝手、共感、それ自体が面白い。また、情報の非対称性がデジタル化によって解消が進んだとしても、アナログな部分も残る。むしろ、アナログの方がいいのではないという考えもある。
  • 銀行から得ているサービスは決済、融資、預金の3つ。伝統的な銀行業務のうち、融資と決済は新しいテクノロジーによって、取って代わられる可能性が高い。他方、預金は銀行サービスに残るのではないか。自分たちで銀行はどうビジネスチャンスにかえていくのか。
  • Fintechは貧困層へのインパクトが大きい。例えば送金をしやすくなるや融資をしやすくなる等。また、身近な例では勉強会のお金のとりっぱぐれがなくなるといったこともあげられる。また、Fintechのおかげで小額の仕事がやりやすくなる。人工知能に関して、人工知能同士の優劣も出てくるのはないか。Fintechが普及するにあたり、アメリカと日本では法律に大きな違いがある。アメリカでは訴えられてから考えるので、動きが早い。日本の法制度の整備もFintechの面から重要ではないか。
  • 金融のリスク(例えばバブル等)の捉え方にはFed viewとBIS viewの二つが存在する。前者は問題が起きてから事後的に対応するもの、後者は問題が起きないように事前に対応するもの。
  • Fintechが普及していくと、銀行のローン、証券会社債権引受業務、ボローカレッジ等さや抜きビジネスの利ざやが減っていく可能性が高い。Amazonの取引履歴での融資では、これまで定量的にしか考えられなかったことも、定性的に見られるようになってくるのではないか。

ワールドカフェ形式で今回は行ったこともあり、多様な範囲に議論が及び参加者の方々にとって何かしらの学びや気付きがございましたら、幸いです。さて、今回はFintechを幅広い視点から考えていきましたが、今後は「ビットコインブロックチェーン」「人工知能とトレーディング業務」「Amazon等のIT系小売業者によるトランザクション貸出」「新たな決済業務」等、論点を絞って、一つ一つの議論を深掘りしていきたいと考えております。

取り急ぎ、3月以降で外部から講師をお招きし、ブロックチェーンについてお話を伺う予定です。ご興味がございましたら、こちらもご参加いただければと思います。
引き続きどうぞ宜しくお願い致します!

第1回法と経済学勉強会_開催報告_2016年1月24日

2016年最初ののFEDの活動は「第1回法と経済学勉強会」となりました!おかげさまで30名以上の方にご参加いただき、おおいに盛り上がりました。

法と経済学

法と経済学

「法と経済学」の原著のタイトルが「Foundations of Economics Analysis of Law」となっているように、本書は、法を経済学的に分析・理解する本となっております。
去年輪読した「組織の経済学」は、組織の仕組みや慣習、制度等を経済学の観点から分析した本でした。「組織の経済学」の続編として、「法と経済学勉強会」では、「法と経済学」を課題図書として、法を経済学の視点から読み解いていきます。
組織の経済学

組織の経済学

第1回では、主に所有権について扱いました。経済学的に考えると所有権があることによって、人は労働のインセンティブをもったり、所有する物を保存したり改良するインセンティブをもったり、また紛争を避けることが出来たりします。
加えて厚生経済学の観点を入れることで、個々人に取っての最適だけでなく社会全体でどうすれば最適になるかを考えることが出来るようになります。例えば共有地の悲劇は、所有権がないことにより、個々人が節度なく消費することで起きたりしますが、所有権を与えることで避けることも出来ます。
グループでのディスカッションでは、法律の適用は前例主義か経済合理性で判断すべきなのか、Fintechが法と経済学にあたる影響はどういったものがあるのか、そしてIoTといったもののインターネットが発達すると所有権がより明示的になるのではないか等、最近のトピックも踏まえ幅広に議論することが出来ました。
今後読み進めるにあたっては厚生経済学の考え方や記述的分析、規範的分析の話は理解しておいた方が、読みやすくなると思いますので、26章と28章(両方合わせても30ページ程)を先に読むことをお勧めします。