未来の金融をデザインする

主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

2018年3月4日(日)に「お金2.0」(以下、本書)を題材として、金融経済読書会lightを開催します。本書はアマゾンレビューの投稿は200件を超え、電車の中でも広告をよく見掛けるベストセラーです。

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

 

2017年はビットコインが乱高下し、「億り人」といったビットコインバブルの波に乗り大儲けをした人がいる一方、2018年に入ってからは仮想通貨取引所インチェックから約580億円相当の仮想通貨NEMが流出し、多額の損失を被った人もいる等、ここ最近仮想通貨の話題はニュース上で溢れています。日本で最も経済・ビジネス書が充実していると思われる東京駅付近の某本屋においても、ビットコインブロックチェーン関連の本がとても賑わっていますが、本書はこのビットコインブロックチェーンブームにおいて最も読まれている本の一冊なので、読書会の題材にすることにしました

2016年以降ぐらいからFintechというfinanceとtechnologyを組み合わせた造語が流行っていますが、著者はFintech を「Fintech1.0」と「Fintech2.0」の二つに明確に区別しています。著者曰く、Fintech1.0はすでに存在している金融の概念をそのままにして、ITを使ってその業務を効率化するようなタイプです。具合的には、ロボアドバイザー、スマートフォン端末を用いた決済、ネットで資金集めをするクラウドファンディンスがFintech1.0となります。

他方、Fintech2.0は1.0とは異なり、中央銀行を中心とする近代に作られた金融の枠組みとは違って、全くゼロベースから金融の仕組みを再構築するものと著者は考えています。本書のタイトルの「お金2.0」もこのFintech2.0が取られています。そしてintech2.0は既存の金融の枠組みをそのまま応用して考えることは出来ないので、理解が難しいとしています。 

では、Fintech2.0もしくはお金2.0とは何なのか。本書はブロックチェーンビットコインの技術的な話は限定的で、むしろFintech2.0の基盤に存在することになるであろう経済の仕組みについて書かれています。具体的には、資本主義から価値主義への移行です。すなわち、これまでお金に価値を置いていた資本主義から、本質的な価値に重きをおく価値主義へ移行すると本書では説かれています。

価値主義において重要なことは、本質的な価値を常に高めることです。そして、価値さえ高めておけばいつでもお金に還元できるような世界がFintech2.0、そしてお金2.0の世界となります。このような価値主義を支えるのが、ブロックチェーンの自立分散型の通貨の仕組みです。多様な価値が、一つのお金の物差しで測られるのではなく、多様なトークンによって測られることになります。このような世界では、ある経済では評価されないような価値も他の経済では評価されるようになります。

本書を読むだけでは、お金2.0の世界において、「どのようにして価値を高めるのか」、「今後ビジネスはどう変わっていくのか」について少しイメージしづらいかもしれませんが、現在の経済の仕組みにおいて、価値を高める行動を取っている本としては、以下の2冊は参考になろうかと思います。

革命のファンファーレ 現代のお金と広告

革命のファンファーレ 現代のお金と広告

 
人生の勝算 (NewsPicks Book)

人生の勝算 (NewsPicks Book)

 

 例えば、キングコング西野さんは先日「リベンジ成人式」と銘打って自腹で数百万円を使って、振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」騒動の被害者救済のイベントを開催しました。西野さんのインタビューでは「クソ赤字ですけど、みんな楽しんでくれたから良かった。はれのひ社長への文句とかは置いといて、とにかく楽しんでほしい」と言っています。うわべだけを見れば確かに赤字ですが、西野さんとしてこのイベントを通じて、自身の価値をかなり高めることができたと感じているはずです。また、今後クラウドファンディングで資金を調達する際には、このリベンジ成人式で価値を上げられたため、より多くのお金の支援を受けられると考えているはずです。このあたりの「どう考えて、どう行動するか」は改革のファンファーレに詳しく書かれていますので、ご参考にしていただければと思います。

 また、価値主義と行った点では、プロとしてゲームを行う「プロゲーマー」の存在も参考になると考えます。プロゲーマーは、企業からスポンサードを受けたり、賞金付きの大会で良い成績を修めることで生計を立てています。下記の本は日本で初めてのプロゲーマーである梅原大吾さんと有名ブロガーのちきりんさんが、既存の価値観という意味での学校的価値観と、プロゲーマーのような新しい職業による新たな価値の生み出し方について議論をしています。 

悩みどころと逃げどころ (小学館新書 ち 3-1)

悩みどころと逃げどころ (小学館新書 ち 3-1)

 

 本書では、お金2.0の世界では今後ますます価値主義が重要になると指摘していますが、実際お金2.0の手前の今の状況においても、既存の価値の枠組みでは計れない、本質的な価値が重要になってきています。その一つとして、時間価値といったことも本書では言及されていますが、時間価値については、以下の本の方がより詳しく書かれています。

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)

 

本書で書かれているような世界が実際に訪れるのかはわかりませんが、今後のビジネスのあり方についてのヒントは多く書かれています。金融経済読書会lightでは本書をどう言った視点で参加者の皆様が読まれているのか楽しみです。