未来の金融をデザインする

主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

【開催報告:2015年10月31日第7回組織の経済学勉強会】

10月31日に第7回組織の経済学勉強会を開催しました。今回扱ったのは、「第?部資金調達:投資、資本構成、コーポレート・コントロール」で、具体的には「第14章投資とファイナンスの古典的理論」と「第15章金融構造、所有、コーポレートコントロール」となります。

組織の経済学

組織の経済学

組織の経済学と言うテーマにも関わらず、金融を扱うということは不思議に思うかもしれませんが、組織が資金調達するにあたり、資本構成が組織にどういった影響を与えるのかという点を考えれば、組織と金融は切っても切れない関係というのがわかるかと思います(簡単に言うと、金主によって組織の在り方は変わるよね、ということですね。)。

さて、第14章は古典的なファイナンス理論について書かれています。14章では、モディリアーニ=ミラーの定理、通称MM定理が成り立つ世界を中心に学びました。MM定理が成立する世界では、資本構成は企業価値に影響を与えなくなります。このような状況で重要なのは、資金の調達方法ではなく、投資対象のプロジェクトそのものになります。この章ではMM定理の前提となるポートフォリオ分離定理やフィッシャーの分離定理、NPV、そして情報が株価にどういった影響を与えるかについての効率的市場仮説について学びました。

第15章では、14章で学んだMM定理が成立しないというより現実に近い状況を想定したファイナンスモデルを学びました。具体的には、株主と経営者や株主と債権者の間で情報の非対称性が存在する世界では、MM定理が成立せず、資本構造は企業価値に影響を与えることとなります。多くの場合、経営者は投資家よりも企業に関する情報を持っています。そのため、投資家は経営者の資本調達や配当政策といった意思決定を持って、どういったシグリナングを発しているのかを考えることになります。他方、経営者の立場からは、よりよい資金調達を行うため、資本構成というメッセージを発することで、投資家に投資をしてもらおうとするインセンティブが出て来ます。

現在、日本でもスチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードといったように、株主の役割が一層見直されるようになりました。今回我々が学んだテーマは現在の日本でもまさに議論されているイシューで、実務の話も踏まえて議論が多いに盛り上がりました。

参加者からは「本書は20年以上前に書かれており、当時では日本の企業が米国と違って短期的ではなく、長期的視点(日本的経営、メインバンク等)を持っていると書かれているのが興味深かった。」「米国では1960年代からのコングロマリットを経て、1980年代に集中と選択を通じたM&Aが多く行われ、その直後に書かれた本だったので、コングロマリットディスカウントの記述が目立ったように感じた。」等といった意見もございました。
次回はついに組織の経済学勉強会も最終回となります。最終回では勉強会後に懇親会も開催する予定です。奮ってのご参加をお持ちしております!