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主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

【開催報告】2013年1月14日(月)金融経済読書会Classic「選択の自由」読書会

こんにちは。FED事務局長の村上です。2013年2回目の読書会は、成人式で三連休最終日となった1月14日(月)に行いました。場所が文京シビックセンターだったので、成人式を控えた新成人がちらほら見かける中、外では豪雪がふっている状況での読書会となりました。勉強会の概要は以下の通りです。

  • 開催日:2013年1月14日(月)9時〜12時
  • 場所:文京シビックセンター
  • 参加人数:19人(途中退席者含む)
  • 課題本:選択の自由

選択の自由[新装版]―自立社会への挑戦

選択の自由[新装版]―自立社会への挑戦

フリードマン著作を扱ったのは、2011年2月の「資本主義と自由」に続き、2回目となります。「資本主義と自由」を扱った際には、GRIPSの安田先生もご参加くださっており、当時のまとめはブログに書かれていますので、ご参考にしていただければと思います。

今回の課題図書となった「選択の自由」は古典といえでも、1980年に出版された書籍で、それほど古くはありません。「選択の自由」は、これまでFEDでも扱ってきた自由主義系の古典、すなわち、「自由論」「国富論」「隷属への道」「資本主義と自由」で議論されてきた理論体系をより、個別具体レベルまで落とし込んでいるので、非常に読みごたえがあります。

今回の読書会には、法学、政治学、政治思想等を学んできた人や理系出身の人等、様々なバックボーンをもたれた方が多数参加され、経済学を学んできた人にとってはすんなり理解でき、普通ならそのまま読み飛ばしてしまいそうな箇所を論点としてあげていただき(そして多くの場合、私を含め経済学を学んできた人にとっては自明となっており、うまく答えられない(苦笑))、非常に盛り上がった会となりました。参加者が多かったので、2グループに分かれましたが、私が所属したグループでは以下のような事を論点としました。

  • 最近負の所得税が議論されるケースが多いが、1980年の時からすでにフリードマンが指摘していた。
  • 理系からみると、理想状態を目指すフリードマンの議論は非常にわかりやすい。同時に、あくまで理想であり、これを実際に実現するのは非常に難しいのではないか。
  • チリにおける教育バウチャーの事例
  • アメリカでは教育バウチャーを行ったものの、問題を起こす学生は学校側から排除され、クーポンを受け取るだけを目的とし、問題を起こす学生ばかりを受け入れる学校(教育は行わない)が出たことが課題となっている。
  • アベノミクスのような財政政策や金融政策で経済が成長するのか。
  • 政府も失敗はするし、市場も失敗をする。市場が失敗するケースは、情報の非対称性や外部性が存在する場合、独占・寡占の状況等、起こる原因はわかってきている。政府の役割を大きくするだけではなく、どういった制度設計を行うかが重要となってくる。
  • 株を保有していると、証券会社から大量の規約等が大量に送られてくる。会社は責任回避のため、こういった規約を送ってきて、政府は消費者がだまされないためにこういった対応をしているが、実際にはほとんど形骸化しているのではないか。
  • フリードマンは政府が大きくなることで、個人の選択の自由が狭まるのを嫌悪している。政府が提示した選択から選ぶのではなく、個人が自ら選択肢を作れるとともに、選択できる状況を望んでいる。
  • フリードマンの目指している自由とは誰にとっての自由なのか。→「自由主義者が究極の目的とするのは、個人の自由であり、これはおそらくは家族の自由である。」『資本主義と自由』P44より引用。

今回の読書会を通じて、政府の役割は何なのか、市場をどこまで頼っていいのかということを考えさせられました。福祉国家のような大きな政府がいいのか、個人の自由を尊重する小さな政府がいいのかは、これまでも多くの議論がされてきました。最終的には個人の価値観が大きく影響することもあり増すが、双方の意見を聞くことで、自分のスタンスを自分で考えることが重要だということを改めて感じました。特に今日は参加者に多様性が多く、普段自分が聞くことが出来ない、意見をたくさん知ることが出来て、学ぶが多かったです。

FEDでは、これまで自由主義系の古典を扱うことが多かったですが、次回2013年4月の金融経済読書会Classicでは、マクロ経済学の祖であり、大きな政府ケインジアンバイブルでも「雇用、利子及び貨幣に関する一般理論」を取り上げます。ご興味があれば、こちらも是非ご参加していただけば幸いです。引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。

以下は、フリードマンの「選択の自由」を題材にしたドキュメントです。

以下は本日の参考文献となります。

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)

次回2013年4月に取り上げる予定の本です。
国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

神の見えざる手で有名な経済学の父の本。「選択の自由」でも何度も引用されています。
自由論 (日経BPクラシックス)

自由論 (日経BPクラシックス)

自由主義3部作のひとつ。フリードマンは自由論の考え方に大きく影響を受けています。
隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】

隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】

自由主義3部作のひとつ。社会主義との対比が詳しく描かれています。
資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

自由主義3部作のひとつ。「選択の自由」よりもより概念的なことが書かれています。人によってはこちらの方が読みやすいかもしれません。
最強の経済学者 ミルトン・フリードマン

最強の経済学者 ミルトン・フリードマン

フリードマンの伝記。フリードマンの教え子には多くのノーベル経済学者がいますが、フリードマンシカゴ大学時代の箇所には彼らとのエピソードも多数紹介されています。
市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影 (中公新書)

市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影 (中公新書)

シカゴ学派の歴史が書かれています。フリードマン以前のシカゴ大学は、実はそれほど自由主義色が強くなかったのは、驚きでした。
もし小泉進次郎がフリードマンの資本主義と自由を読んだら

もし小泉進次郎がフリードマンの資本主義と自由を読んだら

金融経済読書会lightでも取り上げた一冊。国債のデフォルトがおき、日本が再生するために、「資本主義と自由」の考えをもとに、小泉進次郎が日本を改革していく話。漫画です。これだけ読んでも、ほとんど「資本主義と自由」は理解できませんが、国債が破綻したさいのシミュレーションは参考になります。