未来の金融をデザインする

主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

不確実な時代をどう生きるか

「経済には景気循環というものが存在するはずなのに、バブル崩壊後の日本はなぜこれほどまでに不景気が続くのだろうか」

大学(2000-4年)の時に自ら発したこの素朴な問いこそが、筆者が経済学に興味を持つきっかけとなりました。

90年代後半において、国内では当時倒産しないと思われていた銀行が日本長期信用銀行を筆頭に倒産し、また多くの銀行が合併される中で金融市場は混乱しました。また、海外においてもアジア通貨危機やITバブルの崩壊、さらには9.11の事件等、先行きの不透明さがました感がありました。

このような最中、2000年初頭の議論において、日本の不況の原因は、ざっくりわけると以下と考えられていました。

この辺りの混沌とした議論は、以下の本に詳しくまとめられています。 

経済大論戦―1冊で50冊の経済書を読む (朝日選書)

経済大論戦―1冊で50冊の経済書を読む (朝日選書)

 

冒頭の問題意識を持ったまま、経済学研究科の大学院に進学をしたのですが、そこで大きな学びがあったのは、上記の不況の原因に加えて、不景気の理由を「期待」と「不確実性」といった抽象的な概念で説明する研究に出会えたことです。

筆者の大学院時代の指導教官の1人である清水谷諭先生は、「期待と不確実性の経済学」という本の中で、90年以降の不況の原因をミクロデータを用いながら丁寧に分析を行う(今風にいうとまさにEBPM(Evidenced Based Policy Making)の実践)とともに、この不況の”共犯者"の1人として「不確実性の増加」という点を指摘されています。

期待と不確実性の経済学

期待と不確実性の経済学

 

 正直なところ、当時は私自身「構造的な問題が課題」という認識が強く、「不確実性の増加が不況の原因の一つ」というのは、理屈でわかっていても腹落ちしている感じはありませんでした。

その後、2006年に就職し、2008年にリーマンショックを実務上で経験する中で確率分布を伴わない「ナイトの不確実性」の存在や、タレブのブラックスワンで一躍有名になった「べき分布」といったことを学ぶ中で、「期待」や「不確実性」といったことがいかにマクロ的には経済や社会に、そしてミクロレベルでは個人の人生の意思決定に大きな影響を与えるのかを肌で実感できるようになってきました。

冒頭の問いから、20年近く経ちましたが、現代ではVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとってVUCAの時代と呼ばれる程、今後の見通しが立てづらくなっています。

例えば、年金問題一つとってみても、金融庁が発表した老後2,000万円不足問題や財政検証等を踏まえたとしても、30年後にどのような形で我々は年金を受給できるのか、さらには今の子供達が60年以上先にどれぐらいの年金を受け取れるかはほとんど予測がつきません。仮に複数のシナリオを検討して、予測をしたとして、個人として具体的にどのようなアクションを取れば良いのでしょうか。

このような不確実性が増している時代において、思考と行動様式は今後どう変わるのかを解説しているのが山口周さんがかかれた「ニュータイプの時代」です。 

ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式

ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式

 

 本書ではVUCA時代を生きるヒントとして「役に立つかどうかではなく、意味があるか」や「専門家の意見と門外漢の意見を区別せず、ニュートラルかつフラットに扱う」と言ったことが述べられています。

では、この本から不確実性の時代を生きるヒントを得たとして、次のアクションはどうしたら良いのか。

ということで、前置きが長くなりましたが、はたらける美術館と共催で9月28日に絵画鑑賞会兼「ニュータイプの時代」の読書会を実施いたします。

hatabiwithfed-newtype.peatix.com

今年の2月に山口週さんの「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」の読書会兼絵画鑑賞会を実施ましたが、その際に以下のような感想を頂戴しました。

・アートを鑑賞しながら初対面の方達と多様な視点を共有・議論する体験がとても有益だった。さらに、建設的な議論が自然と行われる環境だと、皆さんの魅力がどんどん増すことが分かり、これもとても有益な体験だった。
・正解を出す必要の無い会話の幸福感に気づきました。空気はやはり大事。

 

media.gob-ip.net

ここでの絵画鑑賞会兼読書会の経験はまさに「ニュータイプの時代」に書かれているVUCAの時代を生きる上での「ニュータイプに必要な要件」を実感するための鍵があるのではないか考えております。

今回は20人の限定参加となっており、少人数でがっつり思考を深める予定です。
ご興味がある方は是非ご参加いただけますと幸いです。