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未来の金融をデザインする

主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

【開催報告:2016年5月15日(日)第4回法と経済学勉強会第2編事故法に置ける第10章「抑止の分析の展開」第11章「責任、リスクの負担、保険」】

5月15日(日)に第4回法と経済学勉強会を開催しました。今回扱ったのは、第?編事故法に置ける第10章「抑止の分析の展開」と第11章「責任、リスクの負担、保険」の箇所です。
第10章の「抑止の分析の展開」では、これまでに取り上げた基礎理論を拡張し、過失の認定、無資力、代位責任等に関する諸問題を扱っています。この中では、特に無資力問題が議論になりました。無資力問題とは、加害者側が損害賠償を出来るほどの資力がそもそもない場合に、注意を払ってリスクを減少させるインセンティブが不十分なものになるというものです。本書においては具体例として、原子力発電所の防護壁を作るかどうかが挙げられていました(防護壁は、壊滅的な損害がある場合にのみ役にたつがそれ以外の場ではコストがかかるのみという場合、所有者は防護壁を作るインセンティブをもたいない)。こういった事例において、東日本大震災で似たようなことが実際に起きたことを考えると、制度設計を通じてどのようなインセンティブをもって安全性を担保するのかという重要性を実感します。
第11章では、賠償責任をいかに緩和するのかといった課題について、主に保険の役割について学びました。当日主として議論になったのは「株主代表訴訟保険(会社役員賠償責任保険)」についてです。ご存じの通り、株式会社においては、委託者である株主から選任された受託者である経営者(取締役)がビジネスの実務を行うこととなります。いわゆる「所有と経営の分離」です。このような仕組みにおいて避けては通れないのがプリンシパル=エージェント問題となります。例えば、経営がうまくいかなかった場合に、受託者である経営者は、委託者である株主から「きちんと業務を執行しないから経営がうまくいかなかったんだ。訴える!」と言われるリスクがつきまとうこととなります。こういったリスクを受託者側である経営者があまりに懸念をしすぎると、誰も経営者をしたくなくなるという問題が出てきます。特に昨今では社外取締役の重要性が叫ばれていることもあり、経営者不足は企業価値向上においてクリティカルイシューとなる可能性があります。このような非効率を緩和するのが前述した「株主代表訴訟保険(会社役員賠償責任保険)」となります。一方で、この保険がどこまで役に立つのかという課題もあります。結局のところ、コーポレートガバナンス問題に帰着することにはなるのですが、本章はこういったコーポレートガバナンス問題を考える際にも大きな助けになると思います。最後に、当日のプレゼン資料と参加者の方から教えていただいた今回扱った内容の原論文のリンクを記載いたします。

次回は第3編「契約法」に入ります。途中からの参加も大歓迎です。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

法と経済学

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