未来の金融をデザインする

主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

【開催報告】2013年2月16日(土)FED主催WKB講演「アベノミクス総点検」勉強会

こんにちは。FED事務局長の村上です。去年の11月に若手研究員勉強会(WKB)と合同開催したTPP勉強会の続編として、今回はWKBと一緒に「アベノミクス総点検」というテーマで勉強会を開催しました。場所は前回と同じく文京シビックホールの4階ホールで、参加者は49名と多くの方にご参加していただきました。勉強会の概要は以下の通りです。当日のプレゼン資料及びディスカッション内容のまとめとしてのtogetterのリンクも記載しております。また、当日議論したことは下記のホワイトボードの写真も参考にしていただければと思います。

今回の勉強会は以下の3部構成としました。

  • 第1部「アベノミクス総点検」基調講演『金融政策15年の議論』 FED事務局村上
  • 第2部 パネルディスカッション
  • 第3部 グループディスカッション

第1部では、FED事務局長である私がアベノミクスの全体像及びアベノミクスにおけるイシューと考えるデフレ脱却について、適宜グループワークを交えながらプレゼンテーションをさせていただきました。当日のプレゼン資料はこちらをご参考願います。また、アベノミクスの全体像については、みずほ総研のこちらのレポートを参考にしました。プレゼンでは以下の4つの質問を軸に、アベノミクスの全体像に迫っていきました。

  • アベノミクスに何を期待しますか。アベノミクスにおいて何がイシューだと思いますか。
  • デフレの何が問題だと思いますか。
  • インフレターゲットは何のためにやるのでしょうか。どんなメリットがあるのでしょうか。
  • マネーの増加は経済にどのような影響を与えるのでしょうか。

今回のプレゼンでは、インフレターゲット、ニューケインジアンモデル、貨幣数量説、デットデフレーション、金融政策のトランスミッションメカニズムといった過去15年間の学界における金融政策の議論を振返りながら、アベノミクスにおけるデフレ脱却のための金融政策のあり方を概観致しました。

第2部は、エコノミスト、アナリストをお招きし、同じくエコノミストの方をモデレーターとし、パネルディスカッション形式で、アベノミクスを多角的に検討致しました。パネリストの一人であり、マーケットの視点からアベノミクスの影響についてお話いただいた崔さんには当日の議論を崔さんのブログに記載していただきました。マーケット以外では、財政政策及び消費増税、企業の設備投資についてエコノミストの方にお話ししていただきました。パネルディスカッションはかなり専門的な内容となっていたこともあり、本ブログではすべてを書くことは出来ないため、当日の議論はtwitterとホワイトボードをご確認願います。

最後の第3部では、パネリスト及び経済の専門家の方々をファシリテーターとして、6つのグループに分かれてグループディスカッションを実施しました。6つのテーマは以下の通りです。

  1. マーケット関連指標(為替、株、金利など)
  2. 景気見通し、雇用・物価
  3. 税制、財政政策
  4. 金融政策
  5. 成長戦略、労働市場改革、規制改革
  6. 金融システム

時間の都合上、グループディスカッションの時間は30分程しか設けられなかったのですが、勉強会終了後、「どれに参加しようか迷った」「2〜3回転ぐらいして複数の議論に参加したかった」といった声を多数いただきました。今後の勉強会においてテーマ毎のグループディスカッションを行う際には、時間に余裕を持って、複数回転できるよう設計するように致します。

今回は、WKBとの合同勉強会という形を取りました。FEDではこれまで単独の経済金融に関する勉強会を100回以上開催してきましたが、今回は今までの勉強会にはない程の手応えを感じました。もちろんアンケートでご指摘いただいたように「パネルディスカッションをもっと長くほしい」「全体の質問を受け付ける時間が欲しい」「グループディスカッションの時間をもっと取ってほしい」「最初のプレゼン時のディスカッションはなくてもいいのではないか」といった改善すべき点はたくさんありますし、我々としてもより質の高い勉強会を開催できるよう、参加者の皆様の声は反映していきたいと考えております。そんな中でも手応えを感じた理由はやはり「分業」及び「参加者を巻き込みながら学びの場を創る」の素晴らしさを実感したことにあります。

過去のFEDの勉強会では、発表者がプレゼンをし、その後グループに分かれてディスカッションという形式を取るのが通常した。初期の頃は人数が少なかったこともあり、主催者として参加者の中で一番多く予習をして、質問をされた場合には出来ればすべて答えられるようにしておかなければならないという気負いがありました。自分がプレゼンをする場合はなおさらです。

しかし、今回多くのパネリスト、モデレーターファシリテーターの方にお話をしていただく中で、分業の重要性を気づくとともに、「餅は餅屋」ということに気がつかされました。特に今回のような幅広いテーマにおいては、一人ですべてを網羅するのはかなりの至難の技です。他方、パネルディスカッションのように多方面の専門家が集まれば、議論に幅が出来るとともに、それぞれの議論には深みもあります。加えて、参加者の中にも様々なバックボーンをお持ちの方がいらっしゃるので、そういった方の意見を引き出すことが出来れば議論は一層盛り上がるとともに、学びも多いものとなります。今回の勉強会を通じて、FEDはこれまで参加していただいた人、そしてこれから参加される人に支えられて運営していくのだと強く感じるとともに、改めて感謝の気持ちを感じました。こういった理由から、今までにはない手応えを感じたのだと思います。

FEDのミッションは「未来の金融をデザインする」です。そして、その際のキーワードがAcademic,Business,Realの三つになります。この三つをバランスよく意識することで、より有意義な議論が出来ると考えております。今回は多くの方にご協力いただくことで、この三つが有機的に機能したと考えております。また、「未来の金融をデザインする」のは事務局だけでは不可能で、より多くの人を巻き込み、意見をいただくことで、ミッションの実現に近づくものだと再認識しました。

次回は、同様の趣旨の勉強会をWKBの方々とともに、夏頃に開催する予定です。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。