未来の金融をデザインする

主に経済や金融に関する記事や開催した読書会や勉強会の報告を書いております。

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明_読書会_2018年9月29日(土)

2018年9月29日(土)9時から「イノベーターのジレンマの経済学的解明」の読書会を行いました。「イノベーターのジレンマの経済学的解明」の勉強会自体は、9月2日に著者である伊神先生をお招きして、実施しましたが、今回は、参加者のみで本書をじっくり語りあう会となりました。

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明

 

 前回の勉強会では、伊神先生のプレゼンとその後質疑応答だけであっという間の3時間が過ぎました。そのため、今回は、前回の参加者のご提案により、参加者のみで本書の感想を語り合う(プレゼンもなし)という、読書会の原点のような会となりました。

そして、終わってみれば、3時間休みなしでぶっ続けで議論。ある参加者からは「最高のエンターテイメントでした!」というお言葉を頂戴したほど盛り上がりました。当日の議論のサマリーを以下に記載いたします。

==========================
データ分析について
・P122の第5章からの説明があるように、実証分析、シミュレーションをできるのが経済学の強みだと感じている。イノベーターのジレンマでもそうだが、経営学ではデータを分析するというよりもケースでの議論が多い。一方で、P254以降の仮想シミュレーションにあるように、個別の企業の特性を捨象して分析をしているのは大胆に感じる。
・確かに実証分析やシミュレーションをツールとして経済学ではよく使われる。一方で、経営学でも近年実証分析が多い。なお、入山先生の「世界の経営学者は何を考えているの」*1でも書かれているが、実証分析はあくまで平均を出すだけであることから、アップルやトヨタのようなエクセレントカンパニーの個別の特徴を掴み取るのは難しい。アップル等は普通に考えて、平均的な企業の特性を持っているわけではないだろう。そういった状況においてはケースはスタディはやはり役に立つ。伊神先生の分析では、よりマクロ的な視点から産業を分析をしているので、個別企業の特徴までをすべて踏まえるのは当然に難しいと言える。
・データを使った分析について、ビジネスはまだかなり遅れている。これまでのようにただの回帰分析を行って相関を見るだけでなく、ようやくビジネスでもP140の対照実験のようなことが行われるようになってきている。例えば、本はどこでも価格と質は均一だが、最近本を買うことで楽天ポイントやdポイントポイントが得ることができるケースが増え始めている。ポイントは実質的な値下げとも考えられるため、価格の低下が売上に具体的にどれだけ影響するかを店舗毎に分析をすることができるようになっている。しかしながら、P145に書かれているようなシミュレーションまではまだまだ先だと考える。
・例えば、大湾先生が書かれた「日本の人事を科学する」*2には、人事に関するデータを用いて分析が行われている。ただし、この分析をするにはデータセットをいかに集めるかでかなり苦慮している。企業の協力と学者の統計学の分析手法を用いて始めてできる分析といえる。「こんなデータがあるから何か分析してくれませんか」的な感じで、データ分析を専門家に依頼されても、目的が明確でないため、受託者も困ってしまう。まさにP137に書かれているように「データは何も語らない」の代表例だろう。P138の基本チェックリストは常に確認をする必要がある。
・去年に中室先生らの「原因と結果の経済学」*3や伊藤先生の「データ分析の力」*4が発売されたが、これらを読むことで、どういったデータセットを準備すれば良いかはわかるだろう。
・近年のAIによるデータドリブンな分析もつまるところは回帰分析を行っているにすぎない。特徴量(統計学でいう説明変数)を多く当てはめて、もっとも当てはまりの良い特徴量を見つけているような感じと言える。ただ、仮に当てはまりの良い特徴量を見つけたとしても、なぜその特徴量が被説明変数に有効なのかは解釈を要する。例えば、AIはすでに囲碁や将棋で人間を超えているが、プロ棋士でさえもAIが打つ手を理解できていない場合がある。人間が解釈を与えて、結果のプロセスを把握することが重要になる。
・また計量経済学においては、推定量の不偏性や一致性等においてバイアスがないかが非常に重要な論点となる。一方で、ディープラーニングではこういった点はほぼ無視され、当てはまりに注力している。推定量の不偏性や一致性等の分析については計量経済学の方がAIよりもずっと先を行っているといえる。
・伊神先生のシミュレーションの凄さは、分析用にデータを取ったのではなく、使えるデータのみからデータを加工した点だと感じている。例えば、投資関数を推計するにあたって、資本は数式では「K」と表せば終わりだが、実際に企業のB/SからKを作るのは、それだけで場合によっては半年ぐらいかかったりもする。それぐらいデータセットの作成は大変である。本書ではそこまで詳しく書かれていないが、厳密な経済学の手法を用いて、需要と供給の側面から理論と実証の分析をしているのは本当に凄いと感じた。

動学的感性
・P211の第8章動学的感性について。朝倉さんが書かれている「ファイナンス思考」*5でも似たようなことが書かれていたが、何か共通するものがあるのではないか。
・経済学でもファイナンスでも基本的には将来CFや将来の効用を現在価値に割り引くという手法を用いる。そのため、ファイナンス思考に書かれているということと似ているのはご指摘の通りだろう。動学最適化は、別名back ward induction(P246に書かれている「後ろ向き帰納法」)とも言われる。すなわち、将来のあるべき姿を想定して、そこにたどり着くためにはどうすべきかを逆算していく方法。本書で言うところのブラック企業や不機嫌な恋人はまさにこの例といえる。
・企業を例にとってみると、企業はミッションやビジョンがあって、そこから逆算して、現在の事業の状況を把握して、そのギャップを埋めるために今後どうすべきかを考えるということが必要になってくる。企業がミッションやビジョンがあるのは、後ろ向き帰納法を行うためとも考えられる。
・経営陣は現場の数字を積み上げて、そこから今後の経営計画を考えているケースも多いかと思う。その場合、あくまで現状の延長線上にしか、企業はいけないのではないか。その先に、企業のミッションやヴィジョンがあるならば良いが、そうでないならば、それは経営者の怠慢といえる。
・ビジョンもミッションも明確になっていない企業からコンサルが経営の相談を受けたとしても、そもそもゴールが明確ではないのだから、コンサルも困るはず。仮に企業がコンサルに「ビジョンやミッションを明確にしてほしい」と依頼したら、それこそ本末転倒になってしまうだろう。
・ヤマトを創った小倉昌男の「経営学*6では、まさにゴールから逆算をして経営を考えている描写が出てくる。

問いは何か
・P266の問いは何かが本質的に重要だろう。企業にとっての「問い」とはまさにヴィジョンやミッションである。この「問い」が明確になっていないのに、「このデータを使って何かできませんか」や「数字の積み上げでとりあえず今後の業績予想をする」というのはどうなのだろうか。
・「問い」を具現化したのがまさに企業の理念や社訓と言える。しかしながら、内容も理解せずに社訓を丸暗記することにどれだけ意味があるのか。
・おそらく起業当初は、社訓が本当に意思決定に影響を与えるぐらい重要だったのだろう。一方で、企業が大きくなる中で、社訓や理念が薄まっていき、最終的な丸暗記になったのかもしれない。ただ、丸暗記だとしても、実務を経験する中で、ある時に社訓の意味を理解することもあるかもしれない。例えば、昔読んだ本でその時は意味がわからなくても、時間が経過する中で、もう一度読み直したら新たな発見がある時がある。本の内容は変わっていないものの、後読感が変わったとしたら、まさにそれこそが成長と言えるだろう。社訓も同じくことが言えるのかもしれない。
・最初は社訓や理念の意味がわからなくても将来的にわかれば確かに良いとは思う。一方で、そのままわからずに時間だけが経過してしまったとしたらそれは無駄だろう。実際そのような企業の現場は多いのかもしれない。
・先ほどのデータ分析の話もミッションの話も同じだが、結局のところ「問い」が大事と言える。
・逆に、もし個々人が自身の「問い」を突き詰めた場合、会社の「問い」と自分の「問い」が交わらなくなってしまうと会社をやめる人が続出する可能性がある。その場合、経営者や中間管理職は、テクニックとして、従業員を忙殺させて「問い」を考える余裕を与えないという手法をとるのかもしれない。
・そもそも世の中全員の人が「問い」を持つ必要があるのだろうか。「問い」ばかりを持った人で従業員が数万人という企業をまとめるのは非常に難しいかもしれない。むしろ、起業家等が問いを持ち、その問いに関心を持ったり、もしくは問いには興味がないが面白そうな人がいるから、自分の能力をその企業で生かしたいという人もいるのではないか。
・それはまさに、TEDの裸踊りの例だと言える。言い方を変えると「フォロワー」とも言える。
・ヴィジョナリーカンパニー2*7では、「誰をバスに乗せるか」という話が出てくる。「問い」に共感をしてくれる人をまず乗せることが重要になるだろう。

どんなことを、どんな風に考えながらそこに到達したのか
・P311に「結論や回答そのものに、大した価値や面白みはない」と書かれている。さらに、その後「どんなことを、どんな風に考えながらそこに到達したのかという道のりこそが一番おいしいところ」と書かれていて、この点には深く共感を覚えた。
・本書で示された結論は極めてシンプルである。その結論はP290の「「損切り」と「創業」。事の本質はこれだけである」の部分である。だが、この1行を言うために、本書は289ページを費やしているし、原論文はもっと細かい分析をしている。結論は確かにありきたりかもしれない。一方で、P291に書かれている通り、多くの現場では「全力の尻込み」が行われていて、実際に「損切り」と「創業」に絞って行動をすることは難しいといえる。
新潮45の事例は興味深い。今回記事が炎上し、結果として廃刊ということになった。一方で、今回のようなことがなくても早晩廃刊になっていたことも考えられる。そこまで打算的とは思えないが、炎上をきっかけに廃刊ができたということがあるかもしれない。それぐらい損切りは非常に難しい。みんな結論としては損切りすべきことはわかっている。でも、それまでの社内の意思決定プロセスで全力の尻込みをしているのかもしれない。


人生の岐路
・P12に「人生の岐路に立っておられる方にも、何かしらの勇気みたいなものを提供できるかもしれない」と書かれているが、実際この本からは人生においても非常に有益な示唆をもらった。
・伊神先生のプレゼンに書かれている「一般的関心事項」、「経済的価値」、「私にできること」の3つが交わるところに取り組むという話には非常に感銘を受けた。
==========================
以上

追伸
10月1日に著者の伊神先生から本読書会で議論した内容につき、Face Book上にコメントを頂戴しました。コメントありがとうございました!

www.facebook.com

 

f:id:fedjapan:20181001005953j:plain f:id:fedjapan:20181001010006j:plain

f:id:fedjapan:20181001010013j:plain

 

*1:

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

 

*2:

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

 

 

*3:

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

 

*4:

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

 

*5:

ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論

ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論

 

 

*6:

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

 

*7:

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則

 

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明_著者登壇読書会_2018年9月2日(日)

9/2(土)にイェール大学准教授の伊神満先生をお招きした「イノベーターのジレンマの経済学的解明」(以下、本書)の読書会を開催しました。 

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明

 

当日の伊神先生のご講演の内容はまるまるyoutube上にアップロードされています。加えて、160ページ以上あるスライドも公開されています。両方をみると3時間近くございますが、本書の理解が深まる上に、後半の動画では、本書には書かれていない、本書の続き的な内容もお話しされていますので、必見です。。伊神先生はプレゼンテーションも非常にお上手で、またお話しもとても面白いので、あっという間の3時間になるはずです。

www.youtube.com
 

www.youtube.com

スライド(前後編共通・カラー) 

本書の概要
本書はクリステンセンが書いた「イノベーターのジレンマ」をその名の通り、経済学的に解明した本となります。なお、日本語訳のタイトルは「イノベーションのジレンマ」となっていますが、原文では、「The Innoavtor's Dilemma」となっています。 

イノベーションのジレンマ (―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press))

イノベーションのジレンマ (―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press))

 

 The Innoavtor's Dilemmaでは、業界をリードしていた企業が市場の変化や技術の変化に直面をした時に、自身の地位を守ることに失敗することを説明しています。ここでのポイントは、これまでの業界を先導してきたイノベーターとも言える業界の雄が、慢心等により失敗をするのではなく、顧客の意見に注意深く耳を傾け、新技術に積極的に投資をしたにもかかわらず、市場での優位性を失うということです。


The Innoavtor's Dilemmaは、ハードディスク駆動装置(HDD)業界を例に、上記のような現象を説明をしています。具体的には、すでに成功をしたイノベーターは既存の顧客を多く抱えていることから、新たな技術が生まれてきた際に、その技術の優位性はわかっていたとしても、既存の顧客を重視することで、結果的にイノベーション競争で後手に周り、結果的に新たな企業に駆逐されてしまうということです。

本書は、上記の現象を経済学的に解明した内容としております。経済学的に解明をしているのは、The Innoavtor's Dilemmaは当該現象をケーススタディ的な検討を中心に行っているためです。実際、本書の元となる論文であるEstimating the Innovator’s Dilemma: Structural Analysis of Creative Destruction in the Hard Disk Drive Industry, 1981–1998では動学ゲームやシミュレーションと行ったゴリゴリの経済学を使って説明がなされています。

他方で、本書の書きぶりは「経済学の本気をお見せしよう」、「白い恋人黒い恋人」と言った書きぶりや可愛い挿絵が多いことから、非常にポップで親しみやすく、サクサク読むことができます。

本書におけるThe Innoavtor's Dilemmaの経済学的説明は極めてシンプルです。すなわち

  • 需要面における自社製品の共食い現象の需要関数の推計
  • 供給面における駆け抜けの原因を図るための利潤関数の推計
  • そして、能力格差を図るための投資コストの推計

の3つです(P156)。なお、書きぶりがポップなだけにわかった気になりがちですが、例えば「ミクロ経済学の力*1」を読み直すことで、本書の理解は一層深まるものと思われます。私自身、大学院で経済学を研究をしていたこともあり、さらっと書かれている箇所の節々に分析や示唆の深さを度々感じ、感動さえ覚えました。さすがJournal of Political EconomyにAcceptされるぐらいの論文はここまで論点を詰めているのかと。

また、経済学的な学びがあることに加えて、本書のP12に「人生の岐路に立っておられる方にも、何かしらの勇気みたいなものを提供できるかもしれない」と書かれているように、本書は生き方や物事の取り組みかとしても非常に含蓄がありました。

例えば、P266に書かれている、伊神先生の指導教官であるエドが博士課程の院生に問う「君の問いはなんだ」は、多くの人にとって本質的なことだと思います。事実、伊神先生の大学院時代の同級生で、新参企業の創業者の方は以下のことをおっしゃっています。


投資も起業も経営も、結局その「問い」に尽きる。

また、本書の研究から導き出される経営的観点からの結論(290)は「損切り」と「創業」をどうするか、ということであり、非常にシンプルです。ですが、だからと言って、「ありきたりの結論で面白みがない」という感想を抱いてしまうのは、非常にもったいないです。そうではなく、P311に以下のことが書かれているように、結論に至る過程までが非常に重要となる、と言った点に私自身も感動に近い共感を覚えました。

「結論」や「解答」そのものに、大した価値や面白みはない。そうではなくて

  • そもそもの「問い」
  • その煮詰め方、そして
  • 何を「根拠」に、いかなる「意味」において、その「答え」が言えるのか

つまり「どんなことを、どんなふうに考えながらそこに到達をしたのか」という「道のり」こそが、一番おいしいところで、大人に必要な「科学」というものだ

本書は、1最新の経済学の研究を知る、2イノベーターのジレンマの理解を深める、3経済学の理論が実際どのように応用されるのかを学ぶ、さらには4人生の指針を得る、といったように多角的に学びを得られる本となっています。私も本を読み直すたびに、様々な側面が見えてきて、改めて本書の深みを感じるとともに、最初の頃は、海に潜るどころか浅瀬でチャプチャプ遊んでいただけなのに、わかったつもりになっていたと反省をした次第です。

当日の質疑応答
当日のご講演は前半と後半に分かれていて、それぞれで質疑応答の時間をもうけました。質疑応答では日本のセミナーでは珍しいかと思いますが、常に誰かしらが質問をするために手を挙げていて、非常に盛り上がりました。以下では、一部の質疑応答をご紹介いたします。

  • Q:P256の図9-4において、一つの企業が複数の新規事業開発を行っているような想定はされていないのか。
  • A:現在のモデルではそういった設定はしていない。HDD業界では、大手企業からスピンアウトして新参企業になることが多い。モデルでは、起業家が定期的に生まれるような想定となっている。

 

  • Q:第8章で動学的感性を養おうとあるが、現実の世界において、将来の不確実性に対してはどのように対処をすれば良いのか。
  • A:本書のP233では、パターン別に詳しく解説している。このように考えることが重要だろう。

 

  • Q:今回のご講演では非常に多くの学びがあった。学び方についてのヒントがあれば教えていただきたい。
  • A:まさに「What is your question?」(P266)が大事となるであろう。何を目的関数におくかで学ぶべきことや学び方も変わってくる。

以上となります。また、上記に記載した著者登壇の読書会とは別に9/29に参加者だけで、本書の感想を共有する読書会も開催しております。よろしければそちらもご確認願います。

f:id:fedjapan:20180930225252j:plain f:id:fedjapan:20180930225053j:plain

f:id:fedjapan:20180930225045j:plain

 

 

*1:

 

ミクロ経済学の力

ミクロ経済学の力

 

社会的投資がなぜ今日本で求められているのか

社会的投資とは何か
社会的投資という言葉を聞いたことはありますでしょうか。社会的投資といった場合、狭義には、投資がもたらす社会的・環境的効果までも考慮に入れて投資を行う「社会的責任投資」や「ESG(Environment, Social and Governance)投資」、また、社会や環境にインパクトをもたらす社会的企業に投資を行う「社会的インパクト投資」、そして民間から資金を集めて公共サービスを提供して、行政がその対価として投資家に報酬を支払う「ソーシャル・インパクト・ボンド」等のことを言います。広義には投資において「経済性」と「社会性」を両立させるような投資のことを言います。

図で表すと、縦軸を社会的インパクト、横軸を財務的継続可能性とした場合、以下のように表現されます(図1)。

図1 社会的インパクトと財務持続可能性の両立 
(出所)「日本における社会的投資の最前線」

f:id:fedjapan:20180918171829p:plain


すなわち、社会的投資においては、社会的なインパクトと経済面における財務的継続可能性を両立させることが非常に重要になってきます。では、なぜこの社会的投資が今の日本に必要となってくるのでしょうか。以下では、マクロ経済学的な視点から社会的投資の重要性について考察していきます。

 

経済成長の源泉は何か

社会的投資をより大きな視点から見た場合、「マクロ経済全体に継続的に良いインパクトを与え続けることで経済は成長し続けられるのか」と捉えることもできます。そのため、ここで、マクロ経済学でいう経済成長の源泉について考えてみたいと思います。

マクロ経済学において、経済成長の源泉は①資本の蓄積、②労働人口の増加、そして③技術革新の3つに分解することができます。なお、経済モデルによっては天然資源も経済成長の源泉と考えることがありますが、ここではシンプルに①〜③の3つのみを経済成長の源泉と考えます。

まず①資本の蓄積については、具体的には設備投資のストックと考えることができます。設備投資が多ければ多い程、生産性は高まるので、経済成長は促進されます。先進国が発展途上国よりも経済が大きいのは、十分な資本蓄積があるからと言えます。一方で、資本蓄積が進めば進むほど、資本蓄積が経済成長に資する割合は減っていきます。このことを限界生産力逓減の法則と言います。先進国は確かに発展途上国よりも経済規模は大きいことが多いですが、資本蓄積が経済成長に貢献する割合は発展途上国の方が先進国よりも大きいです。工場が全くないところに工場を一つ建てる場合とすでに複数の工場があるところにさらに新たな工場を建てる場合を比較すると、多くの場合、前者の方が工場を新たに立てた場合の生産性の向上は高いことが見込まれます。

次に②労働人口の増加についてです。例えばカフェの経営を考えた場合、ある一定程度までは店員の数を増やした方が生産性は上がることは容易に想像ができます。また、カフェで働いた経験がある人を新たに雇う方がカフェの生産性は上がります。このようにより熟練度の高い労働人口が増えれば増えるほど、経済は成長していくこととなります。なお、ある一定数の従業員数を超えるとそれ以上従業員を増やしても、生産性はそれほど向上しないことも簡単にわかるかと思います。すなわち、設備等の条件を一定とした場合、労働においても限界生産力低減の法則が働きます。その場合は、①の資本蓄積のように、店舗を増やす等の設備投資をしてから店員を増やすことで、生産性を継続的に上げることができるようになります。

最後は③技術革新です。技術革新はイノベーションとも言えます。経済成長の源泉を考えると、資本蓄積と労働人口の増加の二つでは説明できない成長の源泉はすべて技術革新によるものと考えます。換言すると、設備といったモノでも、労働といったヒトでも成長がなかったにもかかわらず、経済が成長した場合は、その原因は技術革新によるものと考えることができます。

今の日本における経済成長の源泉はどうなっているのだろうか

では現在日本において、上記3つの経済成長の源泉はどうなっているのでしょうか。資本蓄積については、日本のような先進国ではすでに十分に行われており、他国と比較してもむしろ高い水準にあるといえます(図2)。労働人口については、少子高齢化が進んでいることで、減少傾向にあり、この傾向は今後さらに拍車がかかっていくことが予想されます。

そうなると、最後の技術革新が日本の経済成長においては非常に重要になってきますが、残念ながら技術革新、すなわちイノベーションは日本ではそれ程進んでいません。イノベーションの量を定量化するのは困難ですが、経済成長率を分解することで結果的に計算される技術革新の度合い(TFP(Total Factor Productivity))から見ると、1980年代は2.0%台だったにもかかわらず、2000年以降は0.6%まで下がってしまっており、低い傾向にあるといえます(図3におけるTFPの数値)。

図2 各国の資本係数の推移(出所:内閣府

f:id:fedjapan:20180918172030p:plain

図3 日本の経済成長率の推移(出所:内閣府)

f:id:fedjapan:20180918172103p:plain

社会的投資を通じて社会資本を増やして技術革新を起こす

このようにマクロ経済全体で見た場合、日本の経済成長率を今後高めるには、資本蓄積を増やすか、労働人口を増やすか、技術革新を起こすかのいずれかもしくは複数を同時に行うしかありません。一方で先述した通り、資本蓄積の増加と労働人口の増加については、短期的に解決するのは難しいといえます。となると、技術革新を増やしていくしかありませんが、どのようにして技術革新を起こすのか、すなわちイノベーションを起こすかについては、定型化された方法はまだなく、試行錯誤するしかありません。

そこで話は最初に戻り、社会的インパクトを起こすことがイノベーションにつながるという仮説を考えてみます。図1を見た場合、これまで日本経済を支えてきたのは、財務持続可能性が高く、社会的インパクトが限定的な一般企業でした。NPO等の慈善団体は、日本にもこれまでも数多く存在してきたが、財務持続可能性が必ずしも高いとは言えませんでした。財務持続可能性が高くないということは、それだけ生産性及びリターンの低い投資が行われていた可能性があることを示唆します。

イノベーションを起こすという意味でも、今後求められているのは社会的インパクトがあり、かつ財務持続可能性が高い社会的企業の存在であるといえます。

社会的資本の創造を通じて社会的投資を行う

では社会的インパクトを起こすためには社会的企業は具体的に何をすればいいのでしょうか。幾つか考えられますが、ここではソーシャルキャピタルと呼ばれる「社会資本」の形成が重要になることを指摘したいと思います。ソーシャルキャピタルは、南カリフォルニア大学のポール・アドラーらが2002年に「アカデミー・オブ・レビュー」に発表した論文の定義に基づくと「人と人がつながって、関係性を維持することで得られる便益のすべて」といえます。このソーシャルキャピタルは、金融資本(Financial Capital)、人的資本(Human Capital)に続く第3の資本と呼ばれています。

このソーシャルキャピタルが形成されることで、人と人がこれまで以上につながりやすくなり、結果としてイノベーションも生まれやすくなります。イノベーションは、元々は経済学者であるシュンペーターが「経済成長を起動するのは企業家(アントレプレナー)による新結合(ニューコンビネーション)である。」と指摘したことから端を発しています。すなわち、ソーシャルキャピタルを形成することで、新たな新結合が生まれ、イノベーションが生まれやすくなるといえるのです。

企業がイノベーションを起こすにあたっては、知の範囲を広げるために知の探索が重要になると言われています。社外の人たちや企業と協力して新たなビジネスを生み出すオープンイノベーションはまさにその具体例と言えます。

今後、日本の企業が社会的インパクトをこれまで以上に生み出すためには、一層のソーシャルキャピタルの蓄積が重要になってきます。そしてソーシャルキャピタルの蓄積を促すためには、従来の投資の枠を超えた社会的投資がこれまで以上に行われていくことが求められます。このような社会的投資が日本で数多く行われれば、最終的には、資本蓄積と労働人口の点からこれ以上の経済成長を見込むのが難しい日本経済においても、技術革新(イノベーション)を通じて、更なる成長を見込むことができます。日本において、この循環がうまく機能するためには、まずソーシャルキャピタルへの社会的投資が継続的に行われることが肝要となります。

第2回人事と組織の経済学勉強会_開催報告_2018年4月28日(土)

4月28日(土)に開催した第2回人事と組織の経済学勉強会の当日のディスカッションについて記載します。議論のテーマとなった「3章能力への投資」と「4章離職の管理」については、以下のリンクをご確認願います。

fedjapan.hatenablog.jp

当日は3章の内容が非常に盛り上がりすぎたため、離職についての議論はあまり行われず、主に教育に関する話が中心でした。以下では、当日の議論について箇条書きでまとめております。


一般的人的資本と企業特殊的資本

  • 一般的人的資本と企業特殊的人的資本について、個人はなるべく一般的人的資本を高めることで、他社でも通用する能力を高めたいと思っている一方で、企業は企業特殊的人的資本の教育を個人に施すことで、個人を長く企業に留まらせるようにロックインしようとしている。
  • 個人からしたら企業特殊的人的資本を身につけるよりも、一般的人的資本を身に付けたいと思うかもしれないが、企業の本質的な競争力は企業特殊的人的資本にあるはずだ。なぜならば一般的人的資本だけでは差別化できないため。よって、企業特殊的人的資本を見つけることが個人にとっても重要になるのではないか。
  • コンサルの場合、新卒の研修では一般的人的資本を高めるような研修ばかりを受けるし、実際コンサル業界では業界内での転職が多い。
  • 企業が外部にアウトソースするような研修はすべて一般的人的資本に該当することになる。企業が研修をアウトソースばかりするので、他社と差別化できず、競争力を保てなくなってきているのではないか。


競争力のある企業特殊的資本とは結局のところ何のか

  • 企業の競争力は企業特殊的人的資本だけで決まるものではない。業界内でのポジションニング、ビジネスモデル、企業戦略、そして組織のあり方にもよる。個人は一般的人的資本しか有してないとしても、企業が優れたビジネスモデルを持っているならば、企業としては競争力を持つことは可能。そうなると競争力に結びつく、企業特殊的人的資本とは具体的に何のことになるのか(ただし、経費精算や事務連絡の方法等の企業の本質的な競争力に結びつかない企業特殊的人的資本は除く)。
  • 野中郁次郎先生は、SECIモデルを用いて、暗黙知形式知かすることの重要性を説いた*1。競争力の現存となる企業特殊的人的資本は、このようにまだ言語化できていないものではないか。だからこそ、具体的に何なのかがイメージが湧いてこないものと思う。

  • 例えば、プロサッカー選手でいう場合、選手のフィジカルな強さは一般的人的資本と言えるだろう。有名なサッカー選手はクラブチームを渡り歩くが、その際の企業特殊的人的資本(クラブ特殊的人的資本)は一体何であろうか。
  • →それはチームカラーになるのではないか。例えば、守りが強い等。
  • →となるとアナロジーで考えると、企業の競争力の源泉はクレドや企業風土といった抽象的なものになってしまうのか。 


高度人材をいかに使うか

  • MBA、博士号取得者、弁護士、データサイエンティスト等の高度人材をいかに有効に使うか」について、そもそも高度人材を使うことが戦略に織り込まれて初めて、高度人材を使う意味が出てくる。高度人材を使うことありきで議論をするとミスリードになるのではないか。
  • 「組織は戦略に従う」と「戦略は組織に従う」という両方のことが経営学者によって指摘されている。高度人材の活用については、まさに「組織は戦略に従う」ことになろうかと思うが、多くの場合、戦略はすぐに変更できる一方で、組織は簡単には変更が出来なかったりする。そのため、例えば「AIを活用する戦略を行う。そのため、データサイエンティストを大量に採用する」といった戦略をとったとしても、既存の組織体制では、多くのデータサイエンティストを有効に扱えないケースが出てくる。この状況はまさに「戦略は組織に従う」ことに陥っている。このような状況を解消するために、企業は職能別組織から事業部制への改編等の組織変更を行ったりする。しかしながら、組織変更には時間がかかるので、その間は高度人材を有効に活用できない時期が続くかもしれない。そうこうしているうちに、環境が変わったり、経営者が変わり、戦略が再び変更されたりすることで、またも組織改編が行われ、現場が混乱する。このようなことが頻繁に起こっているのではないだろうか。 


離職について

  • 環境の変化が激しい現代において、戦略を変更するとともに、柔軟に組織を変更することが重要となる。その場合は、いかに離職を促すかといったことも重要になるだろう。そう言った意味では、4章から学ぶことは多い。
  • 環境変化が激しい中、企業が競争力を保てるのは選択と集中を行っているからで、他のことにリソースに割いている余裕はないのではないか。
  • 選択と集中に特化しすぎると、環境の変化に素早く対応できなくなるというリスクがある。そのため、企業は多角化戦略を進める中で、新たなビジネスの種を探すことになる。選択と集中を基にした競争力を活かした多角化が新たなイノベーションの源泉となりうる。一方で、多角化がうまくいけば良いが、失敗した場合には、多角化戦略を見直す必要が出てくる。すなわち、再度選択と集中を行うというものである。結局、企業は選択と集中多角化を行ったり来たりすることになる。そのような場合、いかに離職や解雇の戦略を行うかは非常に重要になってくるし、まさに今の日本企業が苦手な点とも言える。


以上となります。後半は組織についても議論が盛り上がりましたが、次回からの輪読は第2部「組織と職務の設計」がテーマとなっております。最近ではティール組織*2といった新たな組織のあり方も議論されていますし、ホットイシューとなっています。次回以降で、組織の理論的な仕組みについて学んでいく予定です。

f:id:fedjapan:20180502132732p:image f:id:fedjapan:20180502132031j:image

*1:

知識創造企業

知識創造企業

 

*2:

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 

人事と組織の経済学_第3章能力への投資及び第4章離職の管理

2018年4月28日(土)に第2回人事と組織の経済学勉強会を開催し、第3章能力への投資及び第4章離職の管理の2章の輪読を行いました。以下では、それぞれの章のまとめについて簡単に記載いたします。

人事と組織の経済学・実践編

人事と組織の経済学・実践編

 

 第3章能力への投資
人事と組織の経済学を手にとって読もうと思うような人は、おそらく一般の人よりも人事や組織の仕組みに関心が高く、また自分の能力を高めたいと考えている可能性が高そうです。この能力を高めるというのが本章のメインテーマとなります。

通常新卒であろうと、中途採用であろうと企業に入った場合は、何かしらの研修を受けることがほとんどです。研修を通じて、自身の能力を高め、組織への貢献を増やすことが、企業が研修を開催する主な理由の一つになります。

では、どのような企業はどのような能力開発を行うべきなのでしょうか。また、能力開発にかかる研修等の費用はすべて企業が負担すべきなのか、もしくは、部分的には個人が負担するべきなのでしょうか。例えば、企業によっては資格の取得に対して、補助金を出してくれるところもありますが、すべての資格に対して補助金は出してもらえないでしょう。

企業が個人に対して教育費用を負担する理由は、教育を行うことで従業員の人的資本が高まり、将来的に生産性が高まることを期待するからです。最初はコストがかかり、後に投資資金を回収するといった文脈では、人的投資は設備投資と同じように考えることができます。

この人的資本で重要なキーワードとなるのが、一般的人的資本と企業特殊的人的資本です。前者は現在勤めている会社でも、他の多くの会社でも等しく生産性を高めることができる、労働者が取得できる能力や知識のことです。例えば、英語や会計、プログラミングの知識等はどの会社でも使えるので一般的人的資本といえます。この一般的人的資本の特徴はポータブル (持ち運び可能)ということです。

他方、後者の企業特殊的人的資本は、一般的人的資本とは異なり、現在の職場では生産性を高めるものの、他の企業では全く価値が認められない人的資本となります。例えば、他社では使われていない機械の扱い方や、企業独特の経費精算の方法等がこちらにあたります。中途採用者が最初の研修で学ぶことの多くはこの企業特殊的人的資本といえます。

MBAといった高度な資格(学位)は、大抵の場合、取得するためには多額の費用と時間がかかりますが、企業が取得費用を負担してくれるケースもそれなりにあります。このMBAというスキルは一般的人的資本のため、他社でも使えることができるポータブルなスキルとなります。そのため、本書では一部の例外を除き、MBA取得にかかる費用は、個人が負担すべきという立場を取っています。理由は、現在勤めている会社だけでなく、他社でも使えることから、人的資本が個人に帰属するようになるからです。

一方で、機械やシステムの使い方等の企業特殊的人的資本について、個人は当該スキルを他社では使えないため、企業が費用を負担するべきであると本書は主張しています。また、企業は、企業特殊的人的資本の教育を積極的に個人に行うことで、優秀な従業員を企業に囲い込む(ロックイン)インセンティブも持つことになります。

その他、第3章では、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の効用や教育後における個人と企業間での報酬の在り方等について、経済学的な視点から分析が行われていました。

第4章離職の管理
第1章と2章では採用の、第3章では教育の解説が本書では行われました。第4章では、従業員を採用して、教育した後の離職について考察がなされています。

日本の大企業の多くは、未だ暗黙に終身雇用と年功序列といった、従業員が長期で働くことを前提とした人事制度が採用されているため、本章で解説されている離職については、読んでもあまり実感がなかった人も多かったのではないかと思います。

実際、本章では、(終身雇用が前提ではあまり考える必要がない)離職に関する企業のメリットが存分に書かれています。例えば離職は社内を常に最新の人材とすることを可能し、会社のパフォーマンスの向上が図られるだけでなく、会社の能力の劣化を防ぐこと等です。最近では、技術の進歩によって環境が変化するスピードも早まっていることもあり、適切に離職を行うことは非常に重要であると本書は主張しています。

印象的だったのは、解雇を行う際に、企業特殊的人的資本が重要な状況においては、最近会社に入ってきた労働者と定年が間近な労働者を解雇することによって、利益が最大化されることを、モデルを用いて解説をされている点です。実際、リストラを行っている会社を見ると、入社したばかりの人や退職間近の人がリストラの対象者になっているケースが多々あることから、企業のリストラの方針は理論的な帰結とも合致しているといえます。

他にも、4章では実際に企業でも採用されている早期退職優遇制度や再就職支援サービスについても理論的な説明が記載されています。

以上、3章能力への投資と4章離職の管理について、簡単なまとめでした。

 

「情報経済の鉄則」読書会_開催報告_2018年4月21日(土)

ネットビジネスが隆盛の現代において、ビジネスシーンで最も有名な経済学者といえば、グーグルのシニアエコノミストであるハル・ヴァリアンといっても過言ではないでしょう。

このハル・ヴァリアンがカール・シャピロと共著で1999年に発売した「情報経済の鉄則(以下、本書)」の読書会を4月21日(日)開催しました。

情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド (日経BPクラシックス)

情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド (日経BPクラシックス)

 

ハル・ヴァリアンは、ミクロ経済学の大家でもあり、経済学部出身の人は学生時代にヴァリアンの教科書*1にお世話になった方も多いかと思います。また、経済学部出身でなくとも、ヴァリアンはグーグルのチーフエコノミストとしても非常に有名なので、IT系に明るい方はむしろグーグルのエコノミストとしてのヴァリアンの方に馴染みがあるかもしれません*2

今般、1999年に書かれた本書が日経BPクラシックにおいて再度翻訳されたことから読書会を開催する運びとなりました。当日は本書の解説を書かれた琴坂先生にもご参加いただいたこともあり、読書会は大いに盛り上がりました。以下では、①本書の概要、②参加者同士のディスカッション内容、そして③琴坂先生を交えたディスカッションの内容について記載します。

①本書の概要
本書は、「情報」といった特殊な財を扱った場合の経済原則についてまとめられた本です。情報を扱ったミクロ経済学の研究については1999年時点でも膨大な研究がありましたが、本書ではこれらの情報に関する研究について、現実のビジネスも踏まえた上で、平易な文章で解説が行われています。

情報財の特徴としては、「生産コストは高いが、再生産のコストは低い」といったことがあげられます。また、このような特徴があることから、情報財はコストではなく、「価値」に応じて価格を設定することが可能(バージョン化)であったり、技術インフラが発展すると、情報へのアクセスが容易になり、結果的に情報の価値も高まったりするといった特質も生まれてくることとなります。

本書で描かれている、情報財によってもたらされる価格のバージョン化、ロックイン、そしてネットワーク外部性といったサービスやサービスの特製の議論等を読んでいると、まさに現在GAFAと呼ばれるgoogleapplefacebook、そしてamazonらのビジネスモデルを思い出すことになろうかと思います*3。この本を19年前に読んでいたら上手にビジネスを興せていたのではないかと考えずには入られませんでしたが、本書を19年前に読んだ友人によれば「当時読んだ時は、ビジネスのイメージが今ほどわかず、今になって再読することでこの本で書かれた意味がわかった」という感想を頂戴しました。確かに、2000年前で、ブロードバンドやスマホが普及していない時点においては、一部のITビジネスに詳しい人以外は、本書を読んでもピンとこなかったかと思います。

他方、現在は本書で解説されているロックイン、ネットワーク外部性等のサービスを、多くの人はスマホ等を通じて経験していることから、本書を読むことで、今ではたくさんの気づきが得られるものかと思われます。実際、価格のバージョン化やロックイン等の事例について本書で説明されているサービスは古いものの、自身で使っているスマホのサービスを考えれば、GAFAのサービスは当然のごとく、その他にもすぐに直近の具体例を思いつくことができます。

②参加者同士でのディスカッションにおけるコメント
以下では、当日のディスカッションで出てきたコメントを一部掲載いたします。

  • 20年近く前に書かれた本だが、今に繋がる視点について多く書かれている。
  • 日本の企業は本書で書かれているようなオープンイノベーション的な発想を十分に使えていないのではないか。
  • 本書では、「プラットフォーム」や「エコシステム」という概念自体は直接出てこないが、これらにつながるアイデアは多く書かれている。なお、プラットフォームは、例えばアップルがiosを中心としてビジネスを展開するような「プラットフォームビジネス」のようなイメージである一方、エコシステムはiosとアンドロイド、そしてその周辺のサードパーティー全てを巻き込んだ上でのビジネスの生態系といったイメージである*4

  • iosやアンドロイドといったそれぞれが独自のプラットフォームを持つ企業よりも、LINEのようにiosとアンドロイドの両方で使えるようなサービスの方が将来的にプラットフォームとなり得るのではないか。事実、LINEはOS横断的にビジネスを展開しており、メッセージサービスを基軸に据え、写真管理、ゲーム、漫画、ニュース、タクシーそしてスピーカー等幅広いサービスを提供している。
  • 企業としては、ユーザーをロックインしたいという気持ちがある一方で、ユーザーは一つの企業にロックインされたくないという書かれ方を本書ではしているが、最近のビジネスではむしろ積極的にロックインされるようなスタンスを取っている企業もある。


③琴坂先生を含めたディスカッションでのコメント
上記②の参加者の本書に対する感想を踏まえた上で、後半は琴坂先生がMBAの授業さながらに参加者に多くの質問をしながら、参加者から一層示唆のあるコメントを引き出すとともに、有益な助言をしてくださいました。以下では、その内容の一例を記載いたします。

  • Q.琴坂先生からの問いかけ:今のビジネスにおいて本書で書かれている内容は定跡のようなものであり、全員がこう言ったことを知っている前提でビジネスに取り組んでいる。では、本書で書かれてる内容で、現在は何が使えて何が使えないのだろうか。
  • (参加者からのコメント)かつてに比べてユーザーの選択肢が増えていることから、一つのサービスが市場で支配的になるということは実際には減っているのではないかい。例えば電子マネーや仮想通貨は複数の規格やサービスが乱立している。
  • 企業は引き続きユーザーをロックインしようとしているが、同時にスイッチングコストは低くなっていることを全体にゆるいロックインをしているのではないか。例えば、ロイターやブルームバーグといった端末は操作が複雑で、他の似たようなサービスを使うにはスイッチングコストが発生してしまうが、SPEEDAのサービスは非常に使い易い一方で、ユーザーからするとすぐにスイッチできてしまう。UXを高めることで、スイッチングコストも低くなってしまっている。
  • ユーザーによっては積極的にロックインされようとする企業や法人もいるのではないか。実際、ロックインされることで、サービスの恩恵は得ることができる(例えば楽天関連のサービスを多く使えば使うほど、楽天のポイントは付与され、ユーザーは得をする。イオンやアマゾンも同様)。
  • ロックインされても良いサービスとされたくないサービスがあるのではないか。例えば、不確実性が高い状況やサービスについては、ユーザーはロックインされたくないと感じだろう。一方、インフラ的で長期的な利用が見込める場合は、ロックインされることを積極的に選ぶかもしれない。また、完全にロックインされるのではなく、プランBといったオプションを有するのも大事になってくる。
  • 最近増えてきているシェアリングエコノミーや贈与経済においては、本書で書かれているようなロックインやネットワーク外部性は必ずしも機能しないのではないか。実際、価値経済では、本書で重要なキーワードとして書かれている正のフィードバック(positive feedback)が起きにくいように感じる
  • 本書の内容は伝統的に経済学をベースにしているため、個人の価値観は一様としているが、現実世界においては、価値観は多様化している。そのことが、正のフィードバックが起きにくい理由の一つではないか。また同じ個人だとしても、自分の関心対象によって、全く逆の行動をとったりもする(平野啓一郎の分人論)。
  • (琴坂先生コメント)この本に書いてなくて、現在使われているビジネスの戦略はどうだろうか。例えば、メルカリやクラシルは後発が、ビジネスで優位な立場を取っている。これらの企業が行った戦略は、「徹底的に広告を行う」ということ。このことは本書には書かれていないが、現在のネット関連ビジネスでは、後発でもプロダクトのUXを高めるとともに、調達した資金を広告に投入することで、多くの人に認知をしてもらった結果、プロダクトが普及する可能性が高まるということがわかっている。最近では、indeedもそう言った例だろう。一方で、こう言った戦略もすでに知れ渡っているので、ビジネスの戦略として優位性が以前のようにあるとは言えない。本書の内容等、かつては狙ってビジネスを爆発的に普及される時代があったが、ここで書かれていることはすべてみんなが知っているという前提で、改めて本書に書かれている内容で未だ使えること、そしてこの本に書かれてはいないが、現在有効になっていることを考えて欲しい。最後に、宿題として、本書ではアップルの凋落が書かれているが、その後、ご存知の通りアップルは見事な復活を遂げた。その原因は何だろうか。みんなで考えてもらいたい(注:宿題の提出義務も宿題の提出先も特段ございません) 

以上となります。本書にも書かれているように、本書の内容は伝統的なミクロ経済学において情報財を用いた不完全競争の多くの理論的研究を元に書かれたものとなっていますが、経済学の理論がこれほど現在のビジネスのあり方に直接的、間接的に影響を与えることには驚きに近い感動を覚えました。まさに経済学の理論とビジネスの現場において正のフィードバックが起こっていたものと考えられます。

同時に琴坂先生のお話でもあったように、現在のビジネスにおいては本書で書かれていることは当然に皆知っている前提で、新たなビジネスを展開する必要があります。本書で書かれている内容の似たようなコンセプトとして、フリー戦略やプラットフォーム戦略が実際今でもビジネスにおいて重要な役割をなっていますが、それらを駆使するだけでは当然に競合企業を出し抜くことは出来ません。ではどうすれば良いのか。答えは一義的に決まるわけではありませんが、当日の議論を踏まえると、ウーバーやAir B and Bといったサービスを代表とする価値経済やシェアリングエコノミーにおいては本書で書かれている情報経済の鉄則以外の鉄則も多数今まさに生まれてきているように感じております。

本書で議論した内容を、この読書会だけで終わらせるのは非常にもったいないですが、幸いにも5月19日に「機械との競争」*5で有名な、エリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーによる新著である「プラットフォームの経済学」の読書会を2018年5月19日に開催します。

プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

 

当日は、翻訳者の村井章子さんにもご参加いただく予定です。ご興味がある方は是非facebookから申し込みをしていただければと思います。

www.facebook.com

f:id:fedjapan:20180430183146j:image  f:id:fedjapan:20180430183242j:imagef:id:fedjapan:20180430183303j:image

*1:例えば、以下。 

入門ミクロ経済学 [原著第9版]

入門ミクロ経済学 [原著第9版]

 
Microeconomic Analysis

Microeconomic Analysis

 

*2:以下の本にてヴァリアンと大阪大学の安田先生と対談されており、ヴァリアンによるグーグルでの取り組みも書かれています。また、ヴァリアンの取り組みについてはこちらの対談も参考になります。

*3:例えば、価格のバージョン化といった戦略についてはフリーで詳しく解説されていますが、フリーで書かれている内容の多くが本書でカバーされています。

フリー[ペーパーバック版] 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー[ペーパーバック版] 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

 

*4:エコシステムについては、例えば、以下の雑誌が参考になります。

*5: 

機械との競争

機械との競争

 

「創造性の宿し方_開催報告_3月24日(日)曳舟図書館

3月24日(日)に墨田区曳舟図書館にて、法政大学専任講師の永山晋先生が「創造性の宿し方」というテーマでご講演を行い、FEDとしても一部協力させていただきました。https://www.facebook.com/events/1690593100984605/

永山先生は、ハーバードビジネスレビュー2017年7月号で「日本企業の生産性は本当に低いのか」と言ったテーマで寄稿されていたり、入山先生が同HBRで連載されている「世界標準の経営理論」において、主にネットワーク理論等でも執筆にご協力されています。 

当日は「創造性の宿し方」というテーマで、研究者がどのような知識を得て、そして研究を進められているのかをお話しいただきました。

そもそも創造性とは何でしょうか。そして、なぜ創造性は必要なのでしょうか。ざっくり言うと、創造性とは新規性と有用性を兼ね備えたものです。そして多くの場合、この二つはトレードオフの関係にあるので、同時に満たすことは稀となることから、創造性を有する人やアイデアは希少となります。

そしてイノベーションには創造性が必要ですが、この創造性はどうすれば得られるのか。当日はこのことについて、研究者がどのような研究をし、そしてこれら研究が我々の生活へどのうにして応用出来るのかのヒントについて永山先生にはお話しをしていただきました。

イノベーションは、シュンペーターの時代から新結合、すなわち既存の知を掛け合わせたところから産まれると言われています。ではどう言った知もしくはアイデアを掛け合わせれば、より創造性が高いアイデアが生まれ、イノベーションにつながるのでしょうか。当日は以下の3本の論文をご紹介していただきました。 

  1. Serendipity and strategy in rapid innovation
  2. Fashion with a Foreign Flair: Professional Experiences Abroad Facilitate the Creative Innovations of Organizations
  3. THE DOUBLE-EDGED SWORD OF RECOMBINATION IN BREAKTHROUGH INNOVATION

上記の中でも、①Serendipity and strategy in rapid innovation(以下、「本論文」)が特に興味深かったので、以下ではそのエッセンスをご紹介させていただきます。

本論文は、いわゆるセレンディピティ(偶有性)はどのようにして生まれるのかということを科学的な視点で分析しているものです。本論文では、アルファベット、料理、そして テクノロジーを例にとって、時間の経過や選択肢が増えることで、それぞれの構成要素の有効性がどのように変化しているかを定量的に分析しています。

以下では、料理についての例を記載いたします。複数の素材を使って料理を作るとき、どの素材が有効かということを考えてみます。例えば、使える食材が少ない時は卵、小麦、バター、玉ねぎ等が使い勝手が良いです。

他方、使える食材が少ない時は、唐辛子等は使い道が限定的なので、扱いづらいです。本論文によれば、使える食材が少ない時には唐辛子よりもココアの方が使い勝手が良いのですが、使える食材が増えていけば行くほど、ココアの有効性は減っていく一方、唐辛子は有効性が増していきます。すなわち、使える材料の量に応じて、素材の有効性が変わって行くとのことです。そして、このことがセレンディピティの理由の一つと考えられます。つまり、最初は役に立たないと思ったものが、状況が変わると有効になって行くということです。

本論文では、現在有効な要素だけを集める短期的な方法、短期的にはあまり使えないが長期的に有効になるものを踏まえて要素を集める長期的な方法、そして適当に要素を集める方法の3つを比較しています。結果は、最初は短期的な方法の方が効果は高いものの、長期的には長期的な将来を踏まえた方法の方がパフォーマンスは上がることが示されています。また、複雑な状況になればなるほど、長期的な視座が重要になるということも、アルファベット、料理、そしてテクノロジーを比較することで指摘しています。なお、適当に集めるのがダントツに非効率でした。

料理の例では、必要な食材が分かっており、どういった料理を作るのかが分かっているので、料理のレパートリーを増やすために唐辛子を使えるようにするほうが長期的な料理の腕前はあがることがわかりますが、実生活や事業においては何が重要になるかは簡単には見極めることはできません。

では、実生活や事業において重要になるのは何なのか。それは人生や事業におけるミッションやビジョンとなります。ミッションやビジョンを持って物事に取り組むことにより、短期的には無駄に見えても、長期的には役立つと言った取り組みが増えることになります。スティーブ・ジョブズはこのことを「connecting dots」と表現しました。

また日本人初のプロゲーマーであり、ゲームに関するギネス記録を複数持っている梅原大吾さんは、過去にインタビューで、次のようなことを言っていました。

「みんなが即座に役立つ情報中心地に滞在しているあいだ、僕は僻地で“ガラクタ集め”をしているんです(笑)。中心地は情報が溢れているので、たとえ1年遠回りしたとしても、中心地に行けば一瞬で情報を吸収できますから、焦ることはない。自分しか知らないガラクタを集めておけば、そのガラクタが1年後に差になる、というワケです。」

本論文でも、レゴのパーツをどのようにして集めるのかといった例が出てきており、すぐに役立ちパーツばかり集めるケースと、すぐには役立たないけど長期的に役立つ集めるケースを比較して、長い目で見ると後者の方が良いものができることが示されています。

このようにイノベーティブなアイデアセレンディピティはまさに長期的な視点があればある程、生まれやすくなることが学術的に指摘されています。

FEDは前身となるマンキュー経済学勉強会を初回は6人(2回目は3人)で2009年11月から開始し、丸3年かけて全36章を全て読み終えました。この3年間で、多くの人達と出会い、そして、多くの方からご協力を得たことで、今のFEDがあります。その背後には、「未来の金融をデザインする」というミッションをもとに活動をしてきたことがあげられます。途中試行錯誤をすることもありましたが、おかげさまでなんとかここまでFEDを続けることができています。

FEDを続ければ続けるほどわかってきたのが、過去に読んだ本や取り上げた課題図書が後から役に立ってくるということです。実際に、今回の永山先生のご講演の関係では、過去に読書会で取り上げた以下の本が役に立ちました。

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

 
ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

 

関連で、「マーケット進化論」の読書会をした際にもセレンディピティについて同様のことを書いていました。

また、今回の永山先生のご講演では、「ネット上に溢れている情報でも適切にアクセするのは難しい」とも感じました。冒頭でも書いたように永山先生は「研究者がどのようにして知識を得ているのか」といったことと関連し、創造性に関する学術的な研究を複数ご紹介してくださいました。これらは、全てインターネット上にて無料で入手することができます。一方で、素人がこれらの情報にアクセスしようとしてもそもそもどうやって検索ワードをかければ良いのか、またアクセスできたとしても、その論文が良い内容なのかそれともイマイチなのかを判別するのは非常に困難です。

FEDでは、学術と実務の架け橋をするような勉強会・読書会の開催を意識していますが、まさに今回のような会の開催をサポートすることでを通じて、普段はなかなかアクセスできない学術的な知見を日々の生活や実務にも役立たせるようなお手伝いが出来ればと考えております。

最後になりましたが、お忙しい中、ご講演を引き受けてくださった永山先生、場所を提供してくださった曳舟図書館の皆様、ハーバードビジネスレビュー読書会の開催者である原さん、そして当日お越しくださった皆様にこの場を借りて感謝も仕上げます。

今回は創造性をテーマにしたセミナーとなりましたが、今後FEDでは、似たような文脈で以下の2冊の本を取り上げてそれぞれ読書会を開催する予定です。ご興味があれば、こちらにもご参加いただけますと幸いです。 

情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド (日経BPクラシックス)

情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド (日経BPクラシックス)

 
プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?

 

 前者は経済学者としてのみならず、グーグルのチーフエコノミストとしても有名なハル・ヴァリアンが著者の一人となっている情報の経済学についての古典です。後者は、「機械との競争」や「セカンドマシンエイジ」の著者らが書いた機械とプラットフォームに関する本です。

いずれの内容もネットサーフィンをしているだけでは到底たどり着けない知の宝庫となっています。今すぐに役立たなくても、向こう5年、10年後には重要になってくるような議論を当日できるように事務局としても尽力します。奮ってのご参加をお待ちしております。

f:id:fedjapan:20180402072016j:plain f:id:fedjapan:20180402072021j:plain